わたしの名探偵
「名探偵ピカチュウ」が今週金曜日に発売される。2016年の2月に配信された3DSのDL専用ソフト「名探偵ピカチュウ〜新コンビ誕生〜」の完全版だ。
二年前の夜、突如ポケモン公式が発表したプロモーションムービー。渋い声で話すピカチュウに、コーヒーと探偵帽。「事件のかおりだ」「行くぞ、相棒!」「探偵じゃないぞ、名探偵だ」。完全に一目惚れだった。最高だと思った。
小学生の頃、誕生日プレゼントにエメラルドを買ってもらったとき。赤の救助隊を買ってもらった日。エルフーンというポケモンを知ったとき。推薦入試の不合格通知を抱えたまま、発売日にYをプレイしたあの日。
ポケモンに人生を狂わされた瞬間は今までも何度もあったが、きっとこのときもそうだった。
(公式動画は公開期間が終了している為、ニコニコ動画で許してください。最高だから見てくれ)
『物語の主人公は、探偵事務所を営む言葉を話すピカチュウ。行き倒れていた謎の少年と共に、街に蔓延る巨大な謎と陰謀に立ち向かっていく……』
そんなイメージのPVだが、そんなことは全くない。これは詐欺PVです。
行方不明の父親を探しに、ライムシティへとやってきた少年・ティム。父親の元パートナーのピカチュウ(コーヒーが好物・言動がおっさん・何故かティムにだけ言葉が通じる)と共に「ポケモン凶暴化事件」や消えた父の謎に迫っていく……そんなストーリー。
このPVだけでもわかるのが、今まで培われてきた世間一般の「ピカチュウ」へのイメージを覆すようなピカチュウだということ。このピカチュウとこのゲームが、ポケモン二十周年の節目の年に発表されたのには大きな意味があった……と思う。
舞台となる世界観について語りたい。
この世界では、人とポケモンが文字通り「共存」している。街のいたるところにポケモンはいて、人と共に暮らしている。でも、それなら本編とそう変わりがない。
だが、この世界での人とポケモンの関係はパートナーだ。「トレーナー」と「ポケモン」ではなく「パートナー」。少なくとも「新コンビ誕生」時点では「トレーナー」という表現はほとんど使われていない。お互いがお互いをパートナーと呼び、寄り添い合って生きている。
そして、モンスターボールの概念もない。
研究所のロゴマーク等ではモンスターボールのようなマークが描かれていたりするが、ボールそのものは登場しない。(ポケモンレンジャーもそんな世界観だが、未プレイなので語れないのが残念)
だからポケモンはボールには収まらず、常に人の側にいる。自分の意志で。これはほんとうに凄いことだと思う。モンスターボールは人とポケモンの結び付きを現すアイテムだが、言い方を変えれば拘束具でもある。(だから今までの作品でも、その是非が問われることはあった)
名探偵ピカチュウの作中では、関係がうまくいかない人間とポケモンもいる。でも、少なくとも、お互いが望んで一緒にいた。ボールという道具を使わずに。
こんなふうにこのゲームでは、ごくさりげなく、自然に、今までとは違った人とポケモンの関係が描かれている。
「見たことのないピカチュウ」と「新しい人とポケモンの関係」
だからポケモン二十周年の年に、このゲームが発表されたのだと思う。わたしはそう信じている。
☆
発売してから割と早い段階でハリウッドでの実写化が報じられた。正直ゲームよりも映像化のほうが似合う作品だと思っていた。シネマティックアドベンチャーなんてうたっているし。だから実写化への不安なんてひとつもなくて、ただ楽しみなだけだった。
だが、それから半年経っても一年経っても、肝心のゲームの続編の情報はなかった。
「続きはハリウッド」「売れなかったから続編はなし」検索でそんなツイートを見ては頭を抱えた。
インタビュー記事の「続編制作中」の言葉やCGWORLDのポケモン特集、クリーチャーズの名探偵が描かれた広告でメンタルを支えていた。
私は悪いオタクなので、解釈も拗らせた。公式が解釈違いだったらどうしようかと思った。最高にハッピーで暗黒な二年間だった。
しかしその日は再び突然訪れた。
これまた神ゲーたるポッ拳にて、愛しのポケモンギルガルドの参戦が決まった翌日だった。冥界覇王斬(笑)浮かれていたし、完全に油断していた。
今度のピカチュウはひと味違う!? シネマティックアドベンチャー『名探偵ピカチュウ』がニンテンドー3DSで2018年3月23日(金)に発売決定! ピカチュウとともに、事件に挑もう! https://t.co/yWt84N7Sn0 #名探偵ピカチュウ #ポケモン pic.twitter.com/pETm4EmfQL
— ポケモン公式ツイッター (@Pokemon_cojp) 2018年1月12日
23時過ぎのツイッターだった。声が出た。ポケセン特典の0章ってなに?amiibo出るの?パケ絵がありえんほどかわいいな?なんかもうありがとう……。
わたしが追いかけてきた二年間は無駄じゃなかったんだなあと嬉しくなった。わたしの勝ちだと思った。人生の勝者。二年間この作品を待ち続けたわたしの、絶対的な勝利だった。
それからはもう、オタク的な表現でいくと供給の嵐だった。特典!ムービー!グッズ!きぐるみ!グリーティング!発売前なのにこんなに?さっすが天下のポケットモンスター!一生付いていきます!!
タイミング良く行けたポケモンセンターではチラシを貰い、名探偵ピカチュウの予約コーナーを見つけてはしゃぐなんてこともやってのけた。「ムービーに出てきたポケモンのぬいぐるみをとりあえず並べました!」感の溢れるディスプレイがたまらなかった。
そして名探偵のきぐるみグリーティング!……には参加できる目処は立っていないけれど、そういう催しがあるってだけで嬉しい。嘘ですほんとはめっちゃ行きたい。わたしの家まで来てください。
そしてこのPV。詐欺じゃない版の実写PV。
あまりにも完璧なPVで、これまたわたしが人生の勝者であることを悟った。今までで無駄に培ってしまった解釈とかキャラ観とかが全くブレることなく公式から供給として注がれるような、そんなPVだった。ティムと名探偵の理想の関係の縮図PVだった。
ほんとうはこのブログは発売日前日に投稿しようと思っていた。キリもいいし、もう少し気持ちの整理もつけたかった。でも今、どうしても胸がいっぱいになってしまったから、この勢いで書き切ってしまいたい。
日課のエゴサ(誤用)で、こんな街頭ポスターのキャッチコピーを見つけた。
「ポケモンたちと、一緒に暮らす街。あなたがきっと、行きたかった街。」
ほんとうにその通りのコピーで、泣きそうになった。
このゲームは、「わたし達の世界にポケモンがいたら」という世界観にとても近い。博士からポケモンと図鑑を貰い、仲間を増やして旅をして、ポケモンリーグのチャンピオンになる。……そんな本編とは異なった、わたし達の日常に先にあるような世界だった。「この世界に行きたい」ではなく「この街に行きたい」。ずっとわたしが感じていたことを、公式の言葉で表してもらった。これ以上嬉しいことはないと思った。
こんな感じで刺さる人にはとことん刺さるゲームです。こんな街に行きたかったし、こんな街で生きたかった。登場キャラクターも魅力的で、人とポケモンの関わり方もドンピシャでした。ほんとうにありがとうございます。ポケセンオンラインでパケ版を予約したしDL版も買ったしamiiboもポチり済み、発売日に合わせて年休も取りました。もう準備万端です。いつでもどうぞ。
もしこのブログを見てくれる誰かがいて、その誰かが名探偵ピカチュウを未プレイなら、体験版だけでもDLしてみたらいいんじゃないですかね。アイコンもかわいいし。
あとは公式サイトが素敵に紹介してくれているので、こんなブログよりこっちをみてください。